イギリス英語を学んでいても、このような不安を感じる方も多いのではないでしょうか?
数あるアクセントの中で特に有名なものが、ロンドンの下町言葉であるコックニーです。
発音や文法が非常に特徴的で、独自のスラングは標準的とされるイギリス英語とはかけ離れています。
▼こんな発音です。なんと言っているかわかるでしょうか?
この記事ではイギリスに9ヶ月間留学した経験のある筆者が、コックニーアクセントの発音や文法の特徴、またコックニーのスラングや歴史について音声付きで分かりやすく解説します!
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学生時代に大学を1年休学し、イギリスに9ヶ月間留学。
日中は現地の小中学校で日本語教師のアシスタントを務めながら、公立カレッジの夜間コースでイギリス英語を学んだ。
歴史的な建造物、緑豊かな公園、近代的なビルやお店が一体となった、ロンドンの独特の雰囲気が好き。
イギリスに行くなら、博物館や美術館巡り、ミュージカル鑑賞を楽しむのがおすすめ!
コックニーとは?
コックニーとは、もともと東ロンドン(イーストエンド)の労働者階級の人々が話すアクセントのことです。
労働者階級とは、低賃金かつ肉体労働の仕事をしている人々のことを言います。
実際にイーストエンドに行ってタクシーの運転手やマーケットの売り手と会話するとコックニーアクセントの英語が聞けるでしょう。
元サッカーイングランド代表のデビッド・ベッカム選手もコックニーアクセントを話すことで有名です。(メディアへの露出が増えるにつれて、標準的とされる英語に近づきました)
現代においてコックニーアクセントはイーストエンドだけでなく、ロンドン市内全域やその他の地域でも聞かれるようになっています。
▼コックニー以外の訛りも知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
コックニーアクセントの特徴
コックニーアクセントの6つの発音の特徴について、音声を聞きながらチェックしていきましょう。
- 名前:Nick Denton
- 出身:イギリス
特徴①:thがfの音になる
コックニーは、「think」「theatre」「author」などの無声の「th」/θ/を、/f/と発音します。
- think(考える):θíŋk → fɪŋk
- theatre(劇場):θɪə.tə → fɪəʔə
- author(著者):ɔ:θər → ɔ:fə
特徴②:the this がvになる
「the」「this」「northern」などの有音の「th」/ð/は、/v/と発音されるのが特徴です。
- the(その):ði: → və
- this(これ):ðɪs → vɪs
- northern(北の):nɔ:ðən → nɔ:vən
特徴③:t, k, d, p にglottal stopが発生する
コックニーアクセントでは、/t//k//d//p/ でglottal stop/ʔ/(喉をつまらせ「ア」のように発音する)が発生します。
(/t/は子音と弱母音の前の/t/、/k/は子音の前の/k/)
- bottle of water([ペットボトルなどに入った]水):bɒtəl ɔv wɔ:tər → bɔʔl ɔv wɔ:ʔə
- blackboard(黒板):blækbɔ:d → bleʔbɔ:d
- and(〜と):ənd → enʔ
- stop(止まる):stɒp → stɔʔ
特徴④:æはeになる
母音の/æ/の音を/e/と発音するのも特徴の1つです。
- blackboard(黒板):blækbɔ:d → bleʔbɔ:d
- bat(こうもり):bæt → bet
- that(その):ðæt → vet
特徴⑤:hの音を発音しない
コックニーアクセントでは/h/の音は発音されません。
- horrible(恐ろしい):hɒrəbəl → ɒrɪbəw
- hospital(病院):hɒspɪtəl → ɒspɪʔəw
- who(だれ):hu: → uː
- help(助ける):help → ewp
特徴⑥:lがwになる
/l/の音は/w/と発音されるという特徴があります。
- milk(牛乳):mɪlk → miwk
コックニーの文法
コックニーの文法は、標準英語の正しい文法とは異なるので、文法間違いと勘違いしてしまう人もいらっしゃるかもしれません。
主な文法の特徴を3つ紹介するので、それぞれの違いを学んでみてくださいね。
文法①:ain’tの使用
コックニーの「ain’t」は、be動詞の否定形の「am not」「isn’t」「aren’t」、助動詞have(has)の否定形の「haven’t」「hasn’t」とイコールです。
コックニー | 標準発音 | 日本語 |
I ain’t coming. | I’m not coming. | 私は来ていません。 |
I ain’t done it. | I haven’t done it. | 私はそれをやっていません。 |
文法②:所有格の表現の違い(me name)
コックニーでは通常所有格のmyが使われるところで目的格のmeが使われます。(指示語でも同様)
コックニー | 標準発音 | 日本語 |
me name | my name | 私の名前 |
them shoes | those shoes | それらの靴 |
文法③:付加疑問文は全て innit
コックニーの付加疑問文はつねに「innit」です。もともと「isn’t it」がくだけて「innit」になったのですが、主語の違いや肯定文、否定文の違いに関わらず「innit」が使われています。
コックニー | 標準発音 | 日本語 |
It’s hot today, innit? | It’s hot today, isn’t it? | 今日は暑い日ですね。 |
You are going, innit? | You are going, aren’t you? | あなたは行くんですよね。 |
They shouldn’t do that, innit? | They shouldn’t do that, should they? | 彼らはそれをすべきではありませんよね。 |
参考:BBC World Service | Learning English | Keep your English Up to Date、Cockney accent (slideshare.net)
コックニーのスラング
コックニーには特有のスラングが多くあります。実際にイギリスへ行く際に聞き取れるよう、事前に特徴を把握しておきましょう!
コックニー | 標準発音 | 日本語 |
wicked | excellent | すばらしい |
score | 20 pound | 20ポンド |
pony | 25 pound | 25ポンド |
nosh | meal | 食事 |
yob | a rude or violent young man | 不良少年 |
minger | an ugly person | 不細工 |
mockney | fake cockney | コックニーを真似した話し方 |
筆者はイングランド中部に留学中、イギリス人の若者達がよく「wicked!」と言っていたのを覚えています。
コックニーライミングスラング
コックニーライミングスラングとは韻を踏むスラングのことです。通常の英単語を、韻を踏む表現(2つか3つの単語)に言い換えて話します。
ライミングスラング①:Adam and Eve → believe
「Adam and Eve」は「believe(信じる)」の意味で使われます。
韻を踏んでいるのはEveとbelieveです。
- Would you Adam and Eve it? (それ信じられる?)
ライミングスラング②:bull and cow → row
「bull and cow」は「row(口論)」を意味します。cowとrowが韻を踏んでいる単語です。
- We had a bull and cow last night. (昨夜私たちは口論をした)
ライミングスラング③:dog and bone → phone
「dog and bone」は「phone(電話)」の意味で話されています。韻を踏むのはboneとphoneです。
- He’s on the dog and bone. (彼は電話中です)
ライミングスラングは意味を知らないとネイティブでも理解が難しいかもしれませんね。
実は、ライミングスラングはもともと犯罪者が仲間との会話の内容を警察に知られないようにするため暗号のように使い始めたという説が有力です。
コックニーアクセントの歴史
「コック二―」という言葉の語源は、14世紀に雄鶏(コック)が産んだような形の悪い卵を指したのが始まりでした。
16世紀初めには、都会育ちで本当の生活を知らない子を意味する言葉として使われていたと言います。
1600年に、コックニーはロンドンのイーストエンド、厳密には「セント・メアリー・ル・ボウ教会の鐘の音が聞こえる場所で生まれ育った人々」と定義されました。
出典:The City Churches: St Mary-le-Bow
現代ではコックニー アクセントはイーストエンドだけでなく、ロンドン市内全域やその他の地域でも聞かれるようになりましたが、それには2つの理由があります。
1つ目の理由は、第二次世界大戦によりイーストエンドの街が焼かれた結果、生粋のコックニー達の多くはロンドンの他の地域や、更に東のエセックスに移り住んだためです。
現代のイーストエンドは海外からの移民によって非常に多国籍な地域になっています。
2つ目の理由は、コックニー アクセントが社会的に不名誉なものでは無くなってきたからです。
昔は公務員の仕事や専門的な職業に就きたければ、コックニーアクセントを矯正する必要がありました。
しかし今ではその必要は無くなり、コックニーアクセントで話し続ける人が増えたと言います。
コックニーの人々は自分たちがコックニーであることを誇りに思っているのです。
参考:The Story of COCKNEY the (London) Accent and its People – Bing vide、コックニー – Wikipedia
まとめ
コックニー とは何か、発音の特徴、文法、スラング、ライミングスラング、コックニーアクセントの歴史について解説しました。
- 発音はthの音の変化やglottal stopをはじめ、たくさんの特徴がある。
- 標準的な英文法とは違う文法で話す。
- コックニー特有のスラングがある。
- ライミングスラングでは通常の英単語を、韻を踏む表現に置き換えて話す。
- コックニーアクセントは歴史的にはロンドンのイーストエンド地域のアクセントだが、近年ロンドン市内全域やその他の地域でも聞かれるようになった。
この記事を読んでコックニーアクセントに興味を持った方は、コックニーアクセントが聞ける映画を観てみてはいかがでしょうか?「マイフェアレディ」や「ハリーポッターとアズカバンの囚人」などがおすすめです!
本記事で紹介したコックニーアクセントをYouTubeで聞き流したい方はこちらから